
ゆう! まきじゃくで、星までの距離を測るぞー!

おっ、元気な宣言だねえ。何種類もの測り方を、つぎつぎに使っていくんだよ
明るさだけでは、距離は決められない


いちばん明るく見える星が、いちばん近いんじゃないの?

そう思うよねえ。でも星は、もともとの明るさが一つずつちがうんだ

えー! じゃあ、明るさだけでは距離を決められないの?

遠くにある大きなランタンと、近くにある小さな豆電球が、同じくらいの明るさに見えることもあるんだよ

大きさがちがうと、同じくらいに見えるの?

明るいおやつの看板も、大きさがちがえば、近いのか遠いのか迷うねえ……あ、またおやつの話になった

ゆう、またおやつに寄り道してる!

あっ、ごめんごめん。だから距離によって、ちがう測り方を組みあわせていくんだ

じゃあ、距離によって測り方を組みあわせるんだね
近い星は、見える位置のずれで測る


にゃんで、位置がずれるの?

まず、みいの目の前に指を1本立ててみて。片目ずつ交互に閉じてごらん

あ! 指が、後ろの景色にたいして、右や左に動いて見える!

それだよ。両目のはばぶんだけ、見える位置がずれて見えるんだ

じゃあ、地球の動きを両目のはばのかわりに使うの?

そう。地球が太陽のまわりを回る軌道を、両目のはばのかわりに使うんだよ

半年も!? みいの目なら、高速で交互に閉じればすぐだよ!

あはは、でも半年待つと、地球は軌道の反対側に着くからね

そのあいだに、近い星の位置が遠い背景の星にたいして、わずかにずれるんだね

このずれを「年周視差」と呼ぶんだ。近い星ほど大きく、遠い星ほど小さくなるよ

そうだよ。Gaiaという探査機は、たくさんの星のずれを何度も測っているんだよ
遠い星は「本当の明るさ」が分かる星を使う


もっと遠い星は、ずれが小さすぎて測れないんじゃないの?

おっ、そこに気がついたんだね。そこでは「本当の明るさが分かる星」を使うんだ

そんな星、あるの?

変光星のなかまに、明るさが決まったリズムで変わる「セファイド」という星がいるんだよ

明るさが変わる周期に、決まったリズムがあるの?

そう。周期が長いほど、本当の明るさも明るいという関係があるんだ

一定のリズムでおやつを出す店なら、においの強さから、お店までの遠さも考えられそうだねえ

ゆう! 測るのはおやつの時間じゃなくて、星の周期だよ!

あっ、そうだったね。周期から本当の明るさが分かれば、見かけの明るさとの差から距離が求められるんだ

灯台みたいだね! 決まった強さで光るってわかってれば、暗く見えるほど遠いってわかるもん
もっと遠くは、超新星が次の目印になる


セファイドも見えないくらい遠い星は、どうするの?

そこでは「超新星」を目印にするんだ

星が爆発するやつ!?

そう。とくに「Ia型」という種類の超新星は、近くの銀河で、セファイドを使って本当の明るさを決めておく

爆発の光って、そんなに遠くからでも見えるの?

……うん。こわく感じるよね。ぼくは隣にいるから、大丈夫だよ

近い銀河から遠い銀河まで、飛び石みたいにジャンプするんだね!

そのIa型超新星は、とても明るいから、もっと遠くの銀河でも見つけられるんだよ

じゃあ、みいも次の銀河へぴょーん!

実際に飛んでいくわけじゃないよ。とどいた光を測るんだ

Ia型もみんな完全に同じ明るさではないんだ。光の変化のしかたや色から、本当の明るさを計算し直すんだよ
物差しをつないで、宇宙の遠くまで測る


ずれで測る方法、変光星、超新星……いろいろあるんだね

これを合わせて「宇宙の距離はしご」と呼ぶんだよ

この測り方だけで、全部の距離を測るの?

近い星の物差しで、遠くでも見える目印の明るさを正しく測って、次の段へ受けわたしていくんだ

じゃあ、いちばん長い定規を1本作れば、それで全部測れるのに!

短い定規を順番に当てながら、長い廊下を測っていくようなものだよ

遠さによって、見つけられる目印がちがうから、定規も順番なんだね

ただ定規を並べるだけじゃなく、次の定規の目盛りが合っているか、そのたびに確かめているんだ

確かめながら、じわじわ遠くまでいくんだね。ほっとした!

赤くなる光も、遠さを測る手がかりなの?

もっと遠い銀河では、光の色が赤くなる「赤方偏移」という現象も、宇宙の広がり方と合わせて使うんだよ
ねこ換算


太陽のとなりに近い星、プロキシマ・ケンタウリまでは、およそ4.25光年

光年って、光が1年で進む距離のことだよね

そうだよ。それをみいのジャンプ、1.5mで数えるとね……およそ2京7,000兆回ぶん

にゃんと……そんなにジャンプしても、まだ着かないの!? ちょっと不安だよ!

……うん。そんなに遠いと不安になるよね。ぼくが隣にいるよ

だから、まきじゃくではなく、明るさやずれで測るんだね

まきじゃくをのばすなんて、とても無理な遠さだよね。だから、明るさやずれで測る知恵が必要なんだ
3ぎょうまとめ
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星までの距離は、明るさだけでは分からず、距離によってちがう測り方を使う
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近い星は位置のずれ(年周視差)、遠い星はセファイドや超新星などの目印を使う
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これらの測り方をつないだ「宇宙の距離はしご」で、少しずつ遠くまで測っていく
きょうのナゾ

ねえ、いろんな方法で測って、みんなおなじ答えになるの?

それって、まだ答えがぴったりそろうか、わからないなぞなの?

うん。博士たちもまだ調べている途中なんだ。答えが見つかるのを、ワクワクしながら待とうね

近い宇宙の広がる速さは、距離はしごで測ったんだよね?

そう。近い宇宙の広がる速さを、距離はしごで測ったんだ

大昔の宇宙のようすから予想した速さと、少し食いちがっているの?

うん。これは「ハッブル・テンション」と呼ばれていて、今も研究が続いているんだ

測り方のどこかを直すの? それとも宇宙のしくみ?

測り方のどこかを直すのか、宇宙のしくみにまだ分からないことがあるのか、研究が続いているんだよ
つぎはこれ!
おとなメモ(おうちの方・先生へ)
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「両目を交互に閉じると指がずれる」は年周視差のたとえとして単純化しています。実際は地球の公転による見かけの位置変化で、恒星自身の固有運動と分離するため複数時点の精密な位置観測が必要です。視差角p(秒角)と距離d(パーセク)の関係d=1/pは理想的な式で、測定誤差が大きい視差をそのまま逆数にすると距離推定が偏るため、実際には誤差モデルなどを考慮します。1パーセクは約3.26光年、視差角の基線には1AUを使います(半年間の観測位置の間隔は約2AU)。
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「灯台」「一定のリズムで光る」というセファイドのたとえは、周期‐光度関係の単純化です。「標準光源」は全て同じ光度という意味ではなく、セファイドは周期と光度の関係、Ia型超新星は光度曲線の形や色などから本来の明るさを推定・標準化しています。セファイドには種族I・IIなどの集団があり、周期‐光度関係は金属量や観測波長の影響を受けるため、無条件に同じ関係を当てはめることはできません。
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見かけの明るさと距離には逆二乗則がありますが、星間ダストによる減光や観測波長、天体のスペクトルなどの補正が必要です。
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「距離はしご」には、本文で中心にした視差→セファイド→Ia型超新星以外に、RRライリ星、主系列星フィッティング、赤色巨星分枝先端、食連星、水メーザーなど、異なる距離範囲で校正・照合に使われる方法があります。すべての天体が全段を順に通るわけではなく、適用範囲が重なる方法を相互に確かめ合う考え方です。
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銀河の赤方偏移には宇宙膨張だけでなく固有速度も含まれ、特に近距離では赤方偏移をそのまま距離に換算できません。赤方偏移から距離を求めるには宇宙モデルが必要です。
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ハッブル・テンションの具体的な数値や統計的な有意さは解析やデータの更新によって変わるため、本文では特定の数値を出さず、測定経路間の食いちがいという説明にとどめています。
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ねこ換算の根拠: プロキシマ・ケンタウリまで約4.25光年、1光年を約9.46×10^15m、ねこのジャンプ1回を1.5mとして、4.25×9.46×10^15÷1.5≒2.68×10^16回(約2京6,800兆回、本文では約2京7,000兆回と概算)。
参考にした資料
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ESA Gaia — Parallax: https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Gaia/Parallax
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ESA Gaia — Cosmic distances: https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Gaia/Cosmic_distances
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ESA Gaia — How far away are the stars?: https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/dr3-how-far-away-are-the-stars
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ESA — Gaia overview: https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Gaia/Gaia_overview
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NASA Hubble — Three Steps to Measuring the Hubble Constant: https://science.nasa.gov/asset/hubble/three-steps-to-measuring-the-hubble-constant/
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NASA LAMBDA — Supernovae and the Cosmic Distance Ladder: https://lambda.gsfc.nasa.gov/education/graphic_history/supernovae.html
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NASA Webb / Hubble — Universe’s Expansion Rate Puzzle Persists: https://science.nasa.gov/missions/hubble/nasas-webb-hubble-telescopes-affirm-universes-expansion-rate-puzzle-persists/
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Leavitt & Pickering (1912) — Periods of 25 Variable Stars in the Small Magellanic Cloud: https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/1912HarCi.173…1L/abstract
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Riess et al. (2022) — A Comprehensive Measurement of the Local Value of the Hubble Constant: https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2022ApJ…934L…7R/abstract
(最終更新日: 2026-08-11)